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Football Without Borders: Alum Shoko Tsuji’s Mission in Global Sports Governance

Football Without Borders: Alum Shoko Tsuji’s Mission in Global Sports Governance
動いたその先に扉は開かれる FIFPROアジア・オセアニア事務総長 辻 翔子(つじ・しょうこ) FIFPRO社内にて いよいよ始まる、4年に一度の祭典「サッカーFIFAワールドカップ(以下、W杯)2026」。世界中が熱狂する一方で、冷静に選手の権利保護や待遇向上に努めるのは、プロサッカー選手の世界的組織「国際プロサッカー選手会( Fédération Internationale des Associations de Footballeurs Professionnels 。以下、FIFPRO)」だ。2024年10月、FIFPROのアジア・オセアニア事務総長に、アジア人女性として初めて就任したのが、早稲田大学スポーツ科学部出身の辻翔子さん。早稲田入学前から「世界のサッカーシーンで仕事がしたい」と願っていた人物は、いかにしてその夢を実現したのだろうか。 全ての経験は、『サッカー×世界』の仕事のために 辻さんの人生観を変えるきっかけは、中学生だった2002年、日本で開催された日韓W杯だった。 2002年、横浜国際総合競技場での日韓W杯決勝にて 「運良く、地元横浜での決勝戦を観戦できたんです。その時、世界が身近になった感じがしました。サッカーというツールを通して世界中の人が集まり、言葉が通じなくてもみんなで一緒に盛り上がれる。いつか私も『サッカー×世界』というフィールドで仕事したいと思ったきっかけです」 思い立ったら行動に移すのが辻さん。中学生ながらも、すぐにサッカー界の主要言語とも言えるスペイン語の勉強を開始。さらに、スポーツの専門知識を身に付けたいと考え選んだ進路が、早稲田大学スポーツ科学部だった。 「スポーツと文化、教育、社会…スポーツをさまざまな角度や視点から探究できたのは、間違いなく今の私の基礎になっています。また、スポーツ・ノンフィクションやドキュメンタリーの世界で活躍されている長南武さんや田崎健太さんの講義(※)は刺激的で、『現場に足を運ぶこと』の重要性を学びました」 ※ 「 実践スポーツジャーナリズム演習 」(2010年開講)。長南武さん(フリーディレクター・商学部卒)、田崎健太さん(ノンフィクション作家・法学部卒) 中でも、ゼミで専攻した国際スポーツ文化論の 石井昌幸 教授(スポーツ科学学術院)からは、その後の人生に影響する具体的なアドバイスを受けたという。 「石井先生は、面白そうな海外の文献やニュースを見つけると、いつも私に紹介してくださいました。英国の地で『 FIFAマスター 』という大学院の存在を知った時には、『翔子さんに向いていると思うよ』とわざわざ連絡までしてくれたんです」 2011年3月、卒業式の日に。ゼミの同期と、石井先生(後列中央)と辻さん(後列右端) FIFAマスターとは、国際的なスポーツ機関で働く人材育成を目的に2000年に開設された、英国・イタリア・スイスの3カ国を拠点とするスポーツ学の大学院。日本では、サッカー日本代表の主将も務めた宮本恒靖さん(現・日本サッカー協会会長)が2012年に入学したことで知られたが、辻さんはいち早くその存在に触れていたのだ。 「いつか自分もFIFAマスターで学んでみたいと、将来の目標ができました。早稲田では他にも、スペイン語やイタリア語、バスク語など、さまざまな言語の講座を受け、海外の大学とオンライン会議で交流する機会にも恵まれました。今でこそZoomなどを使ったオンラインでのやり取りは当たり前ですが、2010年頃にそんな体験ができたのは、早稲田で学んだからこそだと思います」 勉学に励む一方、体育各部の ア式蹴球部女子部 (以下、ア式女子部)に入部し、練習や試合でも忙しい日々を過ごした。 「私が競技者としてサッカーを始めたのは高校生からと遅く、世代別代表選手もいるような早稲田で通用するはずがないと、当初は入部するつもりはありませんでした。でも、蓋を開けてみればサッカー漬けの日々。大学時代の光景として思い出すのは、更衣室や練習前のボール回しでの日常的なおしゃべりばかり。仲間に恵まれた4年間でしたね」 3、4年時にはインカレ連覇も経験するなど、ア式女子部を4年間完走した辻さん。グラウンド外での思い出も多いという。 「海外からの留学生が練習生として参加する機会もあり、その時は、英語ができるからと私がサポート役を担当していました。今にして思えば、あの頃から国を超えた交流の架け橋のような役割をしていたんですね」 2011年1月決勝戦、ア式女子部がインカレ2連覇を達成した時。この時辻さんは客席にいたそう 人生の転機でこそ、『困ったら足を運ぶ。まずは動いてみる』 世界の舞台でサッカーの仕事がしたい。その思いを叶えるため、辻さんは就職活動をせず、スポーツジャーナリズムを専攻できるスペインの 大学院 に進学。中学から学んできたスペイン語をフル活用できる…と思いきや、実際には厳しい現実も待っていた。 「最初の数カ月はもう本当に大変でした。レアル・マドリード戦を見て『20分以内に記事を書く』『実況・解説をする』といった日本語でも難しい課題が、スペイン語で次々と出るんです。授業は全て録音して、家で何度も聞き直してようやく理解できる状況でした」 写真左:ボロボロになるまで使い込んだスペイン語の辞書 写真右:スペインの大学院時代、世界各地から来たクラスメートとサッカーをした時の一枚。辻さんは前列左端 苦境は学業面だけではない。当時のスペインは若者失業率が50%超。仕事探しも一筋縄ではいかなかったが、偶然の出会いと行動力が壁を打ち破った。 「バルセロナ旅行をした際にたまたま入った美容院で、『日本語、スペイン語、英語を操れるスポーツジャーナリズム経験者』を募集する求人を見つけたんです。これはもう応募するしかない! と、すぐにメールを送りました。大学時代に学んだ『足を運ぶことの大切さ』を実感しました」 コーディネーター時代の様子。スペイン、ビジャレアルCFの中継現場で こうして、バルセロナにあるスポーツメディアのコーディネート会社に就職した辻さん。日本の放送局との交渉、サッカー・スペイン代表選手のドキュメンタリー制作やインタビューなど充実した時間を4年ほど経験すると、2016年、満を持してFIFAマスターへの入学を果たした。 「そろそろ次のステップを考えなければと思っていた頃に、FIFAマスターを卒業したばかりの宮本恒靖さんと仕事をする機会があり、『興味があるなら絶対に応募した方がいい』と背中を押していただいて入学を決意しました。1年間でイギリス、イタリア、スイスの3カ国を旅しながらサッカーの現場を学ぶという、肉体的にもハードな内容ではあるのですが、大学院時代の苦労を思えば充実した日々でしたね」 写真左:FIFAマスター入学式、前列左から4人目が辻さん。卒業時は、クラス代表で答辞を務めたそう 写真右:FIFAマスター同期で、ア式女子部でも同期の大滝麻未さん(元サッカー日本女子代表で現日本女子プロサッカーリーグ理事・スポーツ科学部卒)と 辻さんはFIFAマスターでの経験も糧に、2022年からはFIFPROへ活躍の場を移した。 「早稲田時代から周りにはトップアスリートがいましたし、100人以上の選手にインタビューしてきたからこそ、華やかに見える選手たちも、陰ではさまざまな苦労や悩みがあることを知っていました。それだけにFIFPROの求人を見つけた時は、応募するしかない! と即決しました」 写真左:2022年FIFPRO女子サッカーサミットにて。現日本代表の熊谷紗季選手(右から2人目)と辻さん(左から2人目) 写真右:2025年ロンドンでの FIFPROポッドキャスト 収録の様子。元イングランド代表ジョー・ハート選手(左)と現オーストラリア代表ジャクソン・アーバイン選手(右)と 2024年にはFIFPROのアジア・オセアニア地区事務総長に就任。選手の権利がまだまだ未成熟な地域だからこそ、やりがいは大きいという。 「日本やオーストラリアは先進国ですが、その他の国々ではまだまだ給料の未払いなどもあります。選手会や労働組合という文化がそもそもなかったり、禁止されていたりする地域もあるのですが、今年の女子アジア杯では女子選手の賞金額アップを交渉。選手のアワードも新たに創設するなど、できる部分から改革を進めています。課題が多いということは、伸びしろも大きい証ですから」 さまざまな困難を乗り越え、世界のフィールドで活躍する辻さん。その経験も踏まえ、学生に伝えたいメッセージとは? 「大学時代に学んだ『困ったら足を運ぶ。まずは動いてみる』姿勢が、これまで何度も私の扉を開いてくれました。先輩や恩師が背中を押してくれたこともありました。もし何か行き詰まっているならば、まずは動いてみてください。先輩の話を聞く、話題の授業を受けてみる…そういったことからでもいいんです。どんどん動いたその先に、乗り越えるきっかけがあるはずです」 紙媒体で発行していた『早稲田ウィークリー』(2010年6月発行)に掲載された大学4年時の辻さん。「高円宮杯 第44回全日本スペイン語コンテスト」で朝日新聞社賞を受賞した。当時から「スポーツの現場で語学を生かした仕事ができれば」と話している 取材・文:オグマナオト(2002年第二文学部卒業) 【プロフィール】 FIFPROにて 1988年、神奈川県出身。2011年3月、早稲田大学スポーツ科学部卒業後スペインに渡り、マドリードの大学院(スポーツジャーナリズム専攻)に進学。その後はバルセロナのコーディネート会社に就職。2016年9月に国際サッカー連盟(FIFA)運営の大学院、FIFAマスターに入学。2022年からFIFPROで活躍し、2024年にアジア・オセアニア事務総長に就任。現在は、オランダ・アムステルダム在住。
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