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From Beginner to Champion: A Waseda Student’s Rapid Rise in Rakugo

From Beginner to Champion: A Waseda Student’s Rapid Rise in Rakugo
「自分の未熟さを実感した、悔しさの残る初高座をバネに」 文学部 4年 佐々木 駿介(ささき・しゅんすけ) 所属する 早稲田大学落語研究会 の稽古でよく使用する学生会館の茶室にて。「策伝大賞」優勝のトロフィーを手に、浅草で購入した自前の着物を着用 落語。それは、演者が一人で脚本・演出・演技の全てを担う、まさに「究極の一人総合格闘技」。 膨大なせりふを操る記憶力はもちろん、扇子1本で情景を描き出す表現力、間合い一つで空気を変える会話術…。そんな厳しい落語の世界で、2026年2月、全国各地から集う約300人の大学生落語家の頂点を決める「 第23回全日本学生落語選手権・策伝大賞 」(以下、策伝大賞)を制したのが、文学部4年の佐々木駿介さんです。驚くべきことに、佐々木さんが落語を始めたのは大学入学後だそう。わずか3年で頂点へ上り詰めた原動力と、落語に懸ける情熱に迫りました。 ――落語を始めたきっかけは何ですか? 入学式での一枚 高校生の時に、講談師として活躍されている神田伯山先生のラジオに出合ったことです。中日ドラゴンズのファンで、ラジオで野球中継を聴きながら大学受験の勉強していたのですが、野球中継の後に放送されていたのが、伯山先生の番組でした。伯山先生のお話がとにかく面白くて、そこから落語に興味を持つようになったんです。その後早稲田大学に入学し、 落語研究会 (公認サークル。以下、らっけん)の門をたたきました。古典落語から現代風のアレンジまで、自由に生き生きと演じている先輩の姿を見て、「自分もやってみたい」「こう工夫して演じてみたい」と強く惹かれたのを覚えています。 また、落語への興味だけでなく、自分のコミュニケーション能力を高めたいという思いもありました。僕は通信制高校に通っており、人と話す機会があまりなかったんです。そこで、大勢の人の前で話す落語に挑戦することで自分の弱点を克服したい、という気持ちも原動力になりました。 プロの方をお呼びして開催する「 わせだ寄席 」での1枚。大学3年生の時、小野記念講堂にて。前列左から3人目が佐々木さん ――高座(※)デビューはいつでしたか? 1年生の7月に行われたサークル内での発表会です。選んだ演目は、寿命やお金といった人間の根源的欲望をテーマにする、古典落語の代表作「死神」。今思えば、初心者にはハードルの高い演目でした(笑)。「死神」は滑稽さよりも怪談要素が強い演目なので、笑いでお客さんの反応を確かめることが難しく…。何より、「怖さ」を表現する技術力が当時は足りませんでした。 お客さんには温かい目で見守っていただけたものの、自分の中では納得がいかなかったんです。同期には高校時代からの経験者もいれば、初心者でも最初からむちゃくちゃうまい人もいて。自分の未熟さを実感した、悔しさの残る初高座でしたね。 ※ 落語家がはなしをするために設けられた、一段高い場所のこと 初高座で落語を披露する佐々木さん。芸名の柿梅亭果菜(しばいていください)は、以前住んでいた和歌山県の特産品である柿と梅から着想を得て、大学1年生の時に自ら考えたもの ――その悔しさをバネに、2026年2月の「策伝大賞」では見事優勝を獲得。この大会はどのような大会ですか? 「策伝大賞」は、落語の始祖とされる安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)の出身地・岐阜市で毎年開催される、伝統ある大会です。歴史、規模共に最大級で、審査基準も多岐にわたります。喋(しゃべ)りの技術やテンポはもちろん、限られた時間内での構成力やアレンジ力、そして何より「観客からどれだけ笑いを引き出し、魅了できたか」という総合力が問われます。早稲田大学の学生として優勝したのは、僕が初めてでした。 ――優勝した時の率直な気持ちを教えてください。 シンプルに、本当にうれしかったです。ただ、優勝発表のスポットライトが当たった瞬間は、驚きで全く実感が湧きませんでした。実は今回、1次審査に当たる動画審査の提出締め切り1週間前に演目を急きょ変更するという賭けに出ました。締め切りまではとにかく台本を頭に入れることに必死だったのですが、動画審査が通過してからは、演技にこだわりました。披露した「徳ちゃん」という演目では、特に重要な登場人物である花魁(おいらん)をいかに「田舎者っぽく、どこか変な雰囲気」で演じられるかに注目して稽古を行いました。 決勝の講評では、審査員の桂文枝師匠から「声と口調が良い」とお褒めの言葉をいただけて。実は小学生の頃の声変わりが早かったので、自分の低い声がコンプレックスだったんです。でも、落語を通じて「その低い声が良いんだ」と認めてもらえた。長年抱えてきたコンプレックスが、落語という表現の場で最大の武器に変わった瞬間でした。 写真左:「策伝大賞」で優勝した際に決勝進出メンバーと撮影した記念写真。中央でトロフィーを手にしているのが佐々木さん 写真右:らっけん同期と。右から2人目が佐々木さん ――大学ではどのようなことを学んでいますか? 文学部で日本史コースを専攻していて、卒業論文では江戸時代をテーマに執筆する予定です。大学での学びは、落語を演じる上で大きな助けになっています。落語の舞台となることが多い江戸時代や明治時代の歴史背景を知ることで、台本に出てくる言葉の細かなニュアンスや、当時の人々の暮らし、町の情景がより高い解像度でイメージできるようになりました。 ――今後の目標を教えてください。 残りの大学生活で、尺の長い演目にもっと積極的に挑戦したいと考えています。こういった演目は、短い噺とは異なった技術や器量が求められます。長い時間を飽きさせずに聴かせるテンポ感、緩急、そして観客を惹きつけ続ける集中力を習得したいです。2025年に開催された、「 第11回尼崎落研選手権 」でも優勝したので、福井県で夏に行われる「 桂福丸杯 」でも優勝し、3冠を達成できたら最高にうれしいですね。 2025年12月に行われた「第11回尼崎落研選手権」で大賞を受賞した際の写真。写真中央が佐々木さん 佐々木さんが優勝した「第23回全日本学生落語選手権『策伝大賞』」決勝大会の様子 第923回 取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター( SJC学生スタッフ ) 社会科学部 4年 米田 菜々美 佐々木さんの感じる「落語の魅力」は、何もない空間から、演者のしぐさ一つで無限の情景を想像できる楽しさ。同じ演目でも、演じる人が違えば全く別物になる。その個性の違いに注目することが醍醐味(だいごみ)だそう 【プロフィール】 岐阜県出身。クラーク国際高校卒業。休日は、ゲーム実況のYouTubeや映画を見るなどして過ごす。好きな落語家は柳家小里ん(やなぎやこりん)師匠で、好きな演目は、八代目桂文楽師匠の「明烏」。お勧めの講義は 児玉竜一 教授(文学学術院)の「 演劇研究への扉 」。 公式X: @waseda_rakugo 公式Instagram: @waseda_rakken
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